七越の峰より見る大斎原
熊野へまいりけるに、七越の峯の月を見て詠みける
たちのぼる月の辺りに雲消えて 光重ぬるななこしの峯
(『山家集』)
(訳)たちのぼった月のあたりには雲も消えて、
光を重ねたように月が冴えわたっている七越の峯であることよ。
一度訪れたいと思っていた大峰山より数えて七つめの峰にあたる山・・・
七越の峯は熊野本宮大社旧社地の東方すぐ近くにある山なので、
夜、本宮に参拝した折に詠んだ歌だと私はおもいます。
本宮では、いったん昼間、音無川を徒渉し、足下を濡らして宝前に額づいた後、
夜になってあらためて参拝奉幣すると聞きました。
七越の峰には熊野と吉野を結ぶ修験道の山駈けの道
「大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)」が走っています。
熊野から吉野まで連なる大峰山系は、役の行者が開いたとされる修験道の根本道場であり、大峰山系の南端である熊野は中世、修験道の一大中心地でした。
大峰山系を縦走することを「大峰奥駈け」といいますが、奥駈け道の道中には「七十五靡(なびき)」といわれる75ケ所の行場が設けられています。
その靡の一番は熊野本宮の証誠殿です。
本宮が大峰奥駈けの出発点だったのです。
そんな いにしえに想いを寄せて 作品を制作しました。
修験者が 道無き道を行く・・・・ 熊野順峰
七越の峰より那智方面の山々